化学物質 の排出量などを報告、公表する制度は一般にPRTR(化学物質排出・移動登 録制度)と呼ばれ、米英蘭などではすでに導入し、OECD(経済協力開発機構)も96年、加盟各国に導入を勧告していました。制度の導入は単に企業のデータ公開に止まらず、米国などでは企業が詳細な環境報告書や市民との直接対話を通じて、なぜその物質を使用するのか、危険度はどの程度かなどの疑問にきちんと答えているといいます。  米国では、この種制度の導入後、89−96 年に対象物質の排出量が 45.6%減少 したと伝えられ、これは企業が地域住民の反発や企業イメージを考慮して、自主 的に有害物質の利用量を減らした結果とされています。

 さて、内分泌撹乱物質(いわゆる環境ホルモン)などを含めた約200種の化学 物質について、企業にその排出量の報告を義務づける「化学物質排出管理促進 法案」を、通産、環境両省庁が3月上旬国会に提出することになりました。企 業の報告を受けて国がデータを公表するものです。排出状況のガラス張り化 を通じて企業の自主管理を促すのが狙いといえます。コスト負担はあっても 企業側は、環境対策に前向きに取り組む姿勢を示すため、排出量把握とデー タ公表の出来る体制づくりを急ぐことになります。

 新しい制度は環境ホルモンなど人の健康への影響が指摘されながらも科学 的に因果関係の実証できにくい“灰色物質"をも含め、化学物質の排出抑制 を企業に促すのが狙い。両省庁は新法を 2001 年度中に施行、 2002 年度デ ータから公表に移す考えといいます。

 対象カテゴリーにはダイオキシンやベンゼン、トリクロロエチレンなど環 境規制の対象に既に指定されているものも含められます。これらの物質は既 存の制度下では排出基準を超えない限り排出されていること自体が公表され ることは少ない場合が多いのに対し、新制度下では微量であっても報告義務 が生じるわけです。

 義務付け業種: 製造・建設・エネルギーなどのほか、化学物質を取扱う運輸・ クリーニングなどの業種。[対象規模については、厚生省、農林水産省を含め各 省庁間で最終調整中。方向としては、従業員数で数十人規模の工場・事業所にま で報告を義務付ける模様。全国2万個所以上の見込み]

 これからは、企業情報の開示の巧拙が、競争力を左右することになりそう です。

                           

 資料:日本経済新聞、2月18日号

分離分析課 鈴木 聡子


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