「単独処 理浄化槽」は元来トイレット屎尿の排水処理専用のもので、台所・風呂など の生活雑排水は処理できません。これまで住宅機構の水洗化に大きな役割を 果たしてきたものの、家庭からの汚水の2/3以上を占める生活排水が垂れ流し となり、処理性能そのものが低いこともあって、今日では公共用水域汚濁の大 きな原因ともみなされ、生活排水対策上の重要課題の一つとされています。

 一方、昭和50年代後半に開発・実用化された「合併処理浄化槽」は、屎尿処理 と生活排水処理とを兼行できるところから、昭和62年度には、設置のための 国庫補助制度も創設され、急速に普及するに至りました。既に厚生省は平成 7年8月、おおむね3年後をめどに単独処理浄化槽の新設を廃止し、21世紀 初頭にはすべての浄化槽を合併処理浄化槽一本に絞り込む転換方針を打ち出 し、これを受けた官民あげての合併処理浄化槽普及促進の取組みが繰り広げ られていました。

 さらに厚生省は平成8年5月、浄化槽工業会とその会員の浄化槽メーカに 対し、単独処理浄化槽の製造の廃止と合併処理浄化槽の供給体制整備を平成 10年度中をめどに行う旨の要請を行っています。単独処理浄化槽廃止の自主 活動推進プログラムはその重要な柱となるもので、浄化槽工業会が中心とな り、平成9年9月に発足しています。

 実施に際しては公正取引委員会の指導を仰ぐとともに浄化槽メーカが自主 的に参加。プログラム参加メーカがそれぞれ単独処理浄化槽の製造廃止に向 けた方針のもと平成9年度から10年度末までの製造廃止計画を明かにする実 施計画書を作成し、実施状況も自主的にチェック、実効を確認して来た段階 です。

 推進プログラムには加盟会員社すべてが参加しており、うち20社が3月末 で単独処理浄化槽の製造を完全廃止し、すでに合併処理浄化槽だけの製造に 転換しています。残る2社も平成11年度中のできるだけ早期に廃止に踏み切 るとしており、市場在庫は1、2カ月程度しかないところから、早い時期に単 独処理浄化槽はほぼ完全に姿を消すものと見られます。  合併処理浄化槽の普及率は新設レベルで現在50%、すべてが合併処理浄化 槽に置き換わると、汚濁負荷は78%減少に向かうとされ、水質保全の効果は 一段と上がるものと期待されます。

[付] 化学的酸素要求量(COD)でみた生活排水、産業排水の汚濁負荷の割合
 (平成6年度、環境庁調べ。数値は%)

生活排水産業排水そ の 他
東 京 湾68.920.610.5
伊 勢 湾54.533.711.8
瀬戸内海48.941.4  9.7

資料:厚生省生活衛生局水道環境部環境整備課浄化槽対策室(03-3595-2373)発
   平成11年3月1日付「報道発表資料」
  週刊 設備産業新聞、 平成11年3月2日号

環境調査課 関根 利康


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